人の心に貼りつく差別の「種」は、いつ、どこで生まれるのか。
死にかけた人は差別しないか──?
新聞社の特派員としてアフリカ、ヨーロッパ、南米を渡り歩いてきた著者は、差別を乗り越えるために、自身の過去の体験を見つめ、差別とどう関わってきたか振り返ることの重要性を訴える。
本書では、コロナ禍の時期に大学で行われた人気講義をもとに、差別の問題を考え続けるヒントを提示。
熟練のノンフィクション作家が世界を旅して掘り下げる、新しい差別論。
【おもな内容】
はじめに
第1章:死にかけた人は差別をしないか
加藤典洋さんとの共鳴/人間はいつ死ぬかわからない?/人間は有限であると気づくことがもたらす変化/臨死体験がもたらす恥ずかしさ
第2章:アジア人の中にあるアジア人差別
「一般論」の弊害/『マイナー・フィーリングス』との出会い/アイデンティティーにからめとられる/中国でも日本でもどっちでもいいよ
第3章:日系アメリカ人作家の慧眼
ステレオタイプの受け止め方/白人視線の内面化/不朽の名作『ノーノー・ボーイ』
第4章:ジョージ・フロイド事件と奴隷貿易
ジョージ・フロイド事件とロドニー・キング事件/報道する側にある差別/母語を失うということ
第5章:日本にアフリカ人差別はあるか
東京のアフリカ人/マルクス・ガブリエルさんとの対話
第6章:アフリカ──遠望と条件反射
11歳のときに上野で渡された栞/条件反射の根底にあるもの/助けるってどういうことなんだろう
第7章:名誉白人、属性に閉じ込められる不幸
アパルトヘイト撤廃直後の南アフリカで/中国人老女との出会い/「名誉白人」の起源
第8章:心に貼りついたものと差別と
足立区で過ごした時代/もんじゃってなんだ?/『砂の器』とハンセン病
第9章:感受性と属性と──学生の問いに答える
ビリー・アイリッシュは差別的か/若いうちに海外に行くべきか/差別を生む「種」
を探る/差別した人に会いに行く
おわりに
【著者略歴】
藤原章生(ふじわら あきお)
ノンフィクション作家。
1961年、福島県いわき市生まれ、東京育ち。
北海道大学工学部卒業後、エンジニアを経て、89年、毎日新聞社入社。
特派員としてヨハネスブルク、メキシコシティ、ローマ、郡山に駐在。
2005年、『絵はがきにされた少年』で第3回開高健ノンフィクション賞受賞。
著書に『ガルシア=マルケスに葬られた女』(集英社)、『資本主義の「終わりの始まり」』(新潮社)、『ぶらっとヒマラヤ』(毎日新聞出版)、『酔いどれクライマー 永田東一郎物語』(山と溪谷社)など。