壮麗な古代ローマの大浴場と、その娯楽性を継承したイスラームの風呂、心身の清浄・鍛練をはかるギリシャのギムナシウム、苦行・儀式と組み合わされたアメリカ・インディアンの熱気浴、民族のアイデンティティーとしてのフィンランドのサウナ、病気治療として伝播していったインドの仏典にみられる入浴法、中国の「浴堂」と朝鮮半島の「汗蒸」、日本の「風呂屋」「湯屋」…人は風呂にさまざまな意味を見出し、それぞれにふさわしい装置を創出してきた。まさに百花繚乱ともいうべき世界の風呂のありようとその系譜をたどり、「恍惚」=シャーマニズムとの関連において原初のなりたちに至る、画期的な労作。