星好きは大変である。観測は気象条件に大きく左右される。春先の朝晩は寒いし、曇りや雨なら天体は厚い雲の彼方で何も見えない……。
でも、天空の味わい方はそれだけではない。天文学がある。ここでは「てんぶんがく」と読んでみたい。世界各地の星にまつわる伝承や物語のことである。
たとえば、春の夜空に輝く「春の大三角」のひとつ、うしかい座はギリシアで誕生した最も古い星座のひとつで、「鋤や牛を使って畑を耕す人」の意味をもつという。また、葡萄の収穫時期を知るのに用いられたという言い伝えも残されている。日本では、うしかい座の主星アルクトゥールスを、麦が実る頃に見えるので麦星、鯛がよくとれる時期に見えるので魚島星などとも呼ぶ。
ひとつの星や星座にもさまざまな云われがあり、地域によって何が大切にされているかがわかる。いわゆる88星座はあくまでも西洋の想像力の産物。日本だけでなく、インドや中国、南北アメリカなど、天空への見方は一様ではない。星や星座のほか、月や太陽、流れ星や天の川に対して、私たち人類はどんな物語を紡いできたのか。図版多数掲載。2000以上の項目収録。索引も充実。