空から人が落ちてきた!
朝日新聞GLOBE「世界の書店から」の筆者が綴る、
移住者たちのトゥルー・ストーリー。
空から人が落ちてきたーーーそれはアフリカから旅客機の脚につかまってロンドンまで飛んできた青年だった。
飛行機にしのびこみ、ロンドンへの密航を企てた外国人は、過去26年間で16人に上る。
なぜ、ロンドンはこれほどまでに人を引き寄せるのか。
いまやロンドン住民の40パーセント以上が外国生まれ。通算30年のロンドン暮らしになった著者もその一人だ。
コロナ禍のロックダウンを奇貨として、移住者たちの間で交わされた会話は、さながら14世紀ペスト禍の名作『デカメロン』のように、多様で、繊細で、魅力に溢れている。
学校で露骨に現れる人種差別と、それに抗する人たち。
両親にだまされてロンドンへ移住したアメリカ人、中国人。
日本人を憎み続けるイギリス人の存在。
移民、人種や階級差別、貧富の差……。さまざまな問題を抱えながら、世界中から人を集め続けるロンドンの実像を鮮やかに描く。
(目次より抜粋)
遠来の旅人/そもそもの始まり/人種差別ロンドンの変貌/リトル・ドラマーの指導/大地震以降/小学校の風景/ハリウッドからロンドンへ/お辞儀とアペリティフ/愛犬国家/私立校・公立校/ロンドンの日本/ドイツから来た娘/日本を憎んだ人たち/オリヴァーの脱出/エリザベス女王在位七十周年/階級について/食事の意味/空から落ちてきた人たち
園部 哲(そのべ さとし)
翻訳家。1956年、福島県生まれ。79年、一橋大学法学部卒業、三井物産入社。2005年同社退職、翻訳者に。訳書に『北極大異変』(集英社インターナショナル)、『北朝鮮 14号管理所からの脱出』『アジア再興』『アメリカの汚名』『ニュルンベルク合流』『エリ・ヴィーゼルの教室から』『第三帝国を旅した人々』『上海フリータクシー』(以上、白水社)、『密閉国家に生きる』『人生に聴診器をあてる』(共に中央公論新社)。朝日新聞GLOBE連載「世界の書店から」英国担当。ロンドン郊外在住。