日本に住んでいて、パキスタンという国名を耳にすることは極めて少ない。そして、たまに耳に入ってくる情報といえば、爆弾テロといったセンセーショナルな事件や日本国内の不法就労者などのネガティブな話ばかりである。また、1998年5月には、インドに続いて核実験を行い、世界中に衝撃が走った。被爆国である日本は、これに厳重に抗議し、米国とともに経済制裁を課した。これによって、もともとポジティブではなかった日本人のパキスタン観は一層悪くなった。しかし、なぜパキスタンは核実験を行わなくてはならなかったのか、そして、パキスタンは、本当に治安が悪いテロのあふれるだけの国なのか、日本にいては分からない、その実態を紹介するのが、本書『パキスタン・ビジネス最前線』である。投資手続き、貿易手続きといった制度情報またマクロ経済分析、本書では、そういった情報は最小限に留め、具体的なビジネス情報を中心に、産業界へのインタビューを交えながら、知られざるパキスタンの実状を紹介している。