ジェイムズ・M・ブロート賞を受賞し、高い評価を得たジョエル・ウェインライトの主著である本書は、開発としての資本主義を問題化する。グローバル資本主義は、貧困を減少させることなく不平等を増大させ、世界のある地域を富ませ、他の地域を貧しくしてきた。「開発」は甘い餌である。資本主義的発展や成長を求めることが、一方で植民地主義的な開発を招き入れる──本書は、このアポリアに向きあい、グラムシ、フーコー、デリダ、スピヴァク、柄谷行人を導きの糸に、開発としての資本主義を理論的・根底的に批判しつつ、植民地的介入を拒みつつ発展する方途を模索する。マルクス主義とポストコロニアリズムを架橋して、開発をテーマにマルクスやグラムシをサイードやスピヴァクと批判的に接続、中米ベリーズ(マヤ)に軸足を置いて繰り広げられる、権力の一形態としての開発の歴史と政治への考察は、ラス・カサスからジャレド・ダイアモンドに至る「マヤニズム」言説が反復的に生産される過程をも詳細に分析する。資本=ネイション=国家について考える際にも好個の、理論・分析・実践のバランスのとれた好著。