「でっかい つきだ とびこみてえ」 満月が昇るのを見て、こんなことをつぶやく五歳児がいた。本書の舞台となっている川和保育園が毎年制作している「卒園文集」には、驚くことに、こんなつぶやきがたくさん収録されている。 「こころは だれにも きこえない ちいさな こえなんだ」 なんという直観力に満ちたつぶやきだろうか。すでに、詩の領域に達している。本書では、2006年から2013年までの8年間にわたる卒園文集のなかから113の「つぶやき」を選んで、約300枚にも上る写真とともに紹介させていただいた。 横浜市都筑区川和町という街なかにある「川和保育園」、その園庭には40種類以上の樹木が茂り、小さな森を形成している。そしてその中には、驚くべきことに、手作りの重層遊具がたくさん設置されている。もちろん、一朝一夕にできたものではない。半世紀にわたる試行錯誤のうえ、父母らと協働することによってつくりだされた園庭である。 「自分で考え、自分で遊べ 子どもたち!!」というスローガンを掲げる園長は、「川和保育園の常識は、世間の非常識。世間の非常識は、川和保育園の常識」とも語っている。その「川和保育園の常識」とはいったいどのようなものなのかを、園庭で繰り広げられている数々のシーンを紹介することで伝えていきたい。そして、教育・保育関係者のみならず保護者の方々までも、コペルニクス的発想転換が行われた川和保育園の園庭にご招待したい。(みやはら・よういち 写真家)