主人公のノニは、いろんなことができるしっかり者ですが、ひとつだけできないことがあります。それは、いやなときに「いやだ」と主張すること。そんなわけで、友だちのスージーに、髪の毛を切られたうえに染められてしまったり、大好きな本を破られてしまったり。挙句にベッドまでとられてしまいます。とっておきのシリアルまで食べられそうになり、我慢も限界にきたノニが勇気をふりしぼって「いやっ!」と叫ぶと……、スージーは拍子抜けするほど簡単にノニの主張を受け入れます。
2~3歳頃までは、自分の気持ちのままに主張していた子どもも、もう少し大きくなると「いや」といったら相手はどう思うだろうと気にしはじめます。友だちと関わるなかで、いやなときでも「いやだ」といえず、ノニのようにもやもやしたり、イライラしたりする子どもも少なくないと思います。本書はとりわけ、そんな子どもたちに読んでほしい。いやなときは「いや」といっても大丈夫なのだと、主張するのが苦手な子どもの背中を押してくれることでしょう。
この作品を手がけたのはカナダ出身の作家・画家コンビです。淡い色使いのソフトなタッチの絵はノニの気持ちに寄り添ったお話のトーンとマッチして、魅力的な絵本に仕上がっています。気持ちをつたえること、ときには主張することの大切さを教えてくれる本書は、友だちとの関わりが増えてくる時期の子どもたちにぴったりの1冊です。