広島から根の谷川・江の川に沿って、毛利氏の本貫などをゆく「芸備の道」。「安芸門徒」とその地名を冠されるまでに一向宗の盛んな土地にあって門徒を先鋭化させることなく、むしろ取り込んでいった元就の器量を思う。「神戸散歩」「横浜散歩」では二大港都を相次いで歩く。神戸のあっけらかんとした明るさと、旧幕時代以来の歴史が横浜に含ませる苦味を、鮮やかに浮かび上がらせた。大きな活字で装いも新たに、新装文庫版。