十二年前の無念を晴らす。アイヌの心を持つ武士、江戸へ!歳月と大海を隔ててなお拭えぬ、一族の悔恨とは。北の尋ね人を求めて、市兵衛は海をわたる。西蝦夷地アイヌの集落に、江戸の武士がいるという。元船手組同心の瀬田宗右衛門は、その蝦夷の武士が十二年前の刃傷事件で義絶した、長男の徹だと確信する。この夏、跡を継いだ次男の明が成敗され、瀬田家は改易の危機にある。二つの事件に過去の因縁を疑う宗右衛門は、唐木市兵衛に徹の捜索を頼む。だが海路をゆく市兵衛らを、鉄砲を構える〝おろしゃ〟の賊が阻む。