いうまでもなく台所は、食物を調理する場であり、そのための装備でもある。囲炉裏・竈、水瓶、坐り流しの炊事場からダイニングキッチン、システムキッチンまでの変化、変遷とそれをめぐって生起する諸問題は、20世紀という激動の時代の日本および日本人の生活のありようをそのまま反映しているといってよいだろう。本書では台所と、それをめぐって生起する諸問題を、たんに家族内施設としての台所の変遷という側面だけからとらえるのではなく、近年急激に伸びてきた外食産業の発達、ソーシャライズドキッチンまでをも視野に入れて考察することによって、これからの台所のありよう、生活のありようを考える上での大きな問題を提起している。