わたしが搦め取った男でございますか? これは確かに多襄丸(たじょうまる)と云う、名高い盗人でございます――。馬の通う路から隔たった藪の中、胸もとを刺された男の死骸が見つかった。殺したのは誰なのか。今も物語の真相が議論され続ける「藪の中」他、「羅生門」「地獄変」「蜘蛛の糸」など、芥川の名作、6編を収録。
※本書は、講談社文庫『羅生門・偸盗・地獄変・往生絵巻』(1971年7月)および、『日本現代文学全集56 芥川龍之介集』(1980年5月)を底本とし、旧漢字・旧かなとなっているものは新漢字・新かな遣いに改め、ふりがなを加えました。底本に見られる誤植等は訂正するなどしましたが、原則として底本にしたがいました。また、底本にある表現で、今日からみれば不適切と思われる言葉がありますが、作品が書かれた時代背景と作品的価値、および著者が故人であることなどを考慮し、底本のままとしました。よろしくご理解のほどお願いいたします。