最後の秘境 「海の正倉院」が世界遺産へ
福岡県の玄界灘の洋上に浮かぶ沖ノ島。周囲4キロメートルの小さな島が世界の注目を浴びている。
一般の人の入島は厳しく制限され、入島の際には裸になって海水で禊をしなければならない。一木一草一石たりとて島外に持ちだしてはならないという掟は今も守り続けられている。この島は、古代4世紀後半から9世紀にかけて大和朝廷による国家祭祀蛾執り行なわれる重要な場所だった。今も宗像大社の神職がたったひとりで毎日祈りを捧げる神聖な場所でもある。原始の森のような島を登っていくと、中腹に14もの巨岩が群立する姿が現れる。古代の祈りの場は、今なお神々しく幻想的だ。知られざるこの光景を写真家・作家の藤原新也氏が活写した。さらに、すべて国宝に指定された島から出土した8万点にも及ぶご神宝は、当時の国内外から一級品が捧げられた。それゆえ、沖ノ島は「海の正倉院」とも称される。中国大陸、朝鮮半島、古代の東アジア情勢に大きく影響を受けた古代日本がどのように平和を希求したのか。この島には古代の謎が秘められている。
【編集担当からのおすすめ情報】
荒れる玄界灘を沖ノ島に向かって航行する船は、前後左右に激しく揺れている。常人なら立っているのもやっとの状況の中で、藤原新也氏は、舳先に立ってカメラを構え続けた。