カナダ在住の著者が30年以上にわたり集めたイヌイットアートのコレクションの中から
「壁かけ」と名付けられたアップリケ作品を収めた書籍『イヌイットの壁かけ』(暮しの手帖社、2000)の増補改訂版。
1950年代、南方から持ち込まれた病気やカナダ政府の定住化政策によって、イヌイットの生活は大きく様変わりしました。
本書掲載の「壁かけ」は、そんなイヌイットの人々が民族の誇りや、
厳しい自然環境のなかで培われた生活文化を後世に伝えていくために作りはじめた新しい伝統であり、
イヌイットの女性たちが狩りに出かける家族のために手作りする防寒着の裁縫技術を応用して作られたものです。
また、素朴でいきいきとした表現を生み出すカラフルな刺繍やアップリケは、
先進国向けに作られるダッフルコートなどのハギレや糸を活用したもので、
近代化の厳しい現実を受けとめながら、新しい時代にむけて進むイヌイットの人々の思いが一針一針に込められています。
本書では旧版に未収録だった「最初期の壁かけ」と「クリスマスの壁かけ」をあわせて21点追加収録するほか、イヌイットの人形23点も紹介します。