役者にもみまごう色白の目鼻だちの若侍が、上州の街道を江戸へ向かっていた。沼田藩主土岐美濃守の嫡男・恭四郎君-。れっきとした大名世嗣の身でありながら、理由あって三万五千石の城の生活に疑心を持ち、素浪人となったつもりで一人、旅をしていたのであった。だが、国家老の海老原帯刀にとっては好機到来。若君を亡きものとし、家臣の実子を世継ぎに据え、藩政を牛耳ろうと企んでいたのだ。お千加、おもんと出会い、美女二人に想いを寄せられる最中、陰謀の罠に嵌められる恭四郎…。人は斬るまいと心していたが、その狡猾な手口に激昂、封をした刀についに手をかけた!華麗に舞う剣と恋の行く末とは!?時代小説の重鎮・早乙女貢が娯楽性豊かに描く超痛快時代小説。