育児はすばらしい経験であり、多くの喜びと発見を分かち合う営みだが、なぜ母親だけが犠牲になり、生活の全てを子育てに捧げねばならないのか。子どもが可愛く思えないときもある。社会で働く夫に比べて、自分だけ取り残され、子育てに束縛されていらいらするときもある。しかし、母性への幻想が女性の桎梏となり、行き場のない不全感、閉塞感に苛まれ、自分を見失ってしまいそうな人が増えている。本書は六千人の聞き取り調査をはじめ積年の母性研究の成果から、子育ての実態と母親の苛立ちに迫り、母子と社会とのつながりのネットワークや、男と女が仕事と家庭を、対等に担う新たな子育てを模索する試みである。