粛々と勤務医としての業務に従事し、休日は早朝から小説を書く。ときに山を歩き、自然にむかってからだを開く。一歩一歩、山の奥に分け入ると、自意識で凝り固まった「わたし」が木の香や風に溶けてゆく。「生きのびた」著者だからこその、読む者の身の内を温かく浸す、静穏ながら強靱な言葉の数々。滋味溢れるエッセイ33篇。