保守思想について述べた本は少なくないが、古今の思想史の中に位置づけた本は決して多くはない。保守思想自体に体系化を拒む面があるからだ。本書はその数少ないうちの一書であり、入門書にして思想の深奥にまで触れた名著である。歴史の知恵が凝縮した保守という考えを、危機の時代にあって明晰に捉えた本書の価値は、いま極めて大きい。