冷厳な隠密の掟ゆえに、お千絵と弥之丞の恋は許されようもない。といって、お千絵に執拗につきまとう旅川周馬の邪恋は迷惑至極。弦之丞も家を捨て恋を捨て、一管の竹に漂泊の旅を重ねるが、お千絵への思いはきっぱり絶っているだろうか。その弦之丞に隠密の命令が下る。阿波二十五万石の存立にかかわる大仕事が!無論、阿波藩士が手を拱いて待っている訳がない。弦之丞を取巻く蜘蛛手の網。講談社創業80周年記念出版。