◆1 花おぼろとは人影のあるときよ 阪急宝塚駅から歌劇場まで、花の道があって雪洞が吊されていた。その道の尽きるあたりに数本の楓があり、楓にも雪洞が吊されていたので、まず「楓にも花のつづきの雪洞を」という句が出来た。夜桜を見る会であったが花冷のする夜で、人通りも少く桜がちぢかんで見えた。そんな所へ若い男女が現われた。花おぼろという言葉が頭を掠めたのであった。(『初心』昭和二十九年)