古代より中国と朝鮮・日本・ベトナムは漢字を共有し、それを媒介に儒教・律令・漢訳仏教などの文化を享受した。著者はこのような文化圏と政治・外交システムが一体になった自己完結的世界を「東アジア世界」とよんだ。この東アジア世界論の根底には日本の歴史を世界史的観点から理解しようとする企図があり、それは東アジア前近代史研究の理論的枠組となった。著者の発想の根本とそれが生まれた時代状況を確認し、東アジアと日本の歴史像を考える。