人の身ぶりやしぐさはたいへん多様であるが、歴史にもまれながら形づくられてきた集団ごとの共通性もまた多い。ひとつひとつの動作、表情には長い社会的文化的経験が凝縮されているのである。しかし、そのように伝承されてきた無言の身体的知識は、情報化や技術革新の高波のなかで、今日、一挙に忘れ去られようとしている。本書は、世界各地で観察された身体伝承を記録し、その文脈を探り、変容の方向を示唆しようとする試みである。