遍歴漂泊する職人・芸能民・勧進聖など、中世に生きた「遊手浮食の輩」と呼ばれる人々に注目し、歴史の表舞台に登場しないこの無名の人々のとり結ぶ、世俗の人間関係とは「無縁」な関係を追究する。「無主」「無縁」の原理を担った人々の力こそ、真に歴史を動かしてきた弱者の力であるという著者の主張は、従来の日本史像の一面体を拒否するとともに、人類共同体のあり方について、すぐれて普遍的な問題を提起する。