中世人は、すべての人間が宿業を背負っていると考えていた。仏教の世界観である六道は、三善道(天・人・修羅)と三悪道(餓鬼・畜生・地獄)とに分かれ、罪業である殺生にも善悪の違いがある。六道の中でも三悪道について、前世・現世・来世の三世という概念や、因果応報の歴史から中世人の思考を紐解き、知られざる中世仏教史の世界へといざなう。