「創業以来、最大の変革期が到来した」――。
危機感を募らせたトヨタ自動車が、「つながり」を志向した経営へと大胆に舵を切り始めた。
ケイレツの壁を越えて、スタートアップ企業や個人も含めて幅広く連携し、“知恵”や“資産”を採り入れようと試みる。そうでなければ、激烈なグローバル競争のなか、スピーディに斬新なビジネスを創造し市場に送り出せないからだ。
この手法は今や世界的な潮流で、思い切った転身を図った米ゼネラル・エレクトリック(GE)も実践することで知られる。
いわゆるオープンイノベーションを、R&D(研究開発)ではなく事業レベルの現場で実践するわけだ。
そして今、つながりを実現するためにトヨタなどが最重要視するキーワードがある。
それが、「API」だ。
知恵や資産を「機能」として貸し借りするために、異なる企業のシステムをつなぎ合わせる“扉”と言っていい。
つながりたい企業群との間をAPIによってつなぎ込み、蜘蛛の糸のように縦横無尽に張り巡らせる。
そこに21世紀の経済の血液であるデータを流し、互助的な生態系を前提にビジネスを組み立てようというわけだ。
時代の要請を受けて、2017年5月に参議院本会議で可決・成立した改正銀行法によって、今後銀行や信用金庫はAPI公開の努力義務を負うことになった。
政府が推進する成長戦略「未来投資戦略2017」でもAPIは重要なキーワードの一つとして取り上げられる。
そう、もはや企業経営者にとって、APIなくして未来は語れない。
本著は、APIによって激変する経営の現場を日本で最初に紹介するものである。
テクノロジーを注入された先端企業が、どんな理念で経営を実践し、具体的なアイデアとしてビジネスに落とし込んでいるのか。
答えは、すべてこの一冊に詰まっている。