『大菩薩峠』の開巻劈頭、老巡礼が理由もなく机龍之助に斬り殺される。死と背中合せの病床にあった著者は、この老巡礼に自らを重ね合せて理不尽な死に想いを馳せる。こうして、不朽の名作『大菩薩峠』探索の旅が始まる。激動の幕末を流浪する盲目の剣士机龍之助を追跡しつつ、著者の筆は、時に作者中里介山の思想に及び、また自らの体験や感想に言及して、自在に飛び交う。