奈良時代、寺院建設はもちろん、道路や河川・池溝の整備や掘削、あるいは架橋と、多くの事業を行ったという行基の実像は俗説の奥に隠れて未だ明らかではない。行基はなぜこれほど多くの事業を成し得たのか。行基像、あるいはその背景を、文献資料だけでなく、事業の足跡を実地に検証するとともに、彼の行動の背後にある有力な渡来人と技術集団、また同時に彼らによりもたらされた神や神仙思想を、行基八十余年の生涯にとらえる。