「合戦の作法をしかと見て置け。冥土のみやげにな」慶次郎の口から凄まじい声があがった。雄叫びである。十三騎の若者たちの魂を凍らせ、馬を止めたほど凄絶な声だった。同時に、この異様な黒馬がまっしぐらに丘を駆け降りて来るのを彼等は見た。それが自分たちに向っているのだと気付いた時は、五間の距離に迫っていた。慶次郎の朱柄の槍は宙に円を描き、その長大な穂先が早くも四人の首を中空に飛ばしていた。ときに酔い、ときに恋し、ときに闘う、戦国の末尾を飾った男の中の男!そういう言葉が消えて、久しい。それを、甦らせてくれる。