「異人館」とは、神戸市北野・山本地区周辺の伝統的建造物群のなかでも、とりわけ一般の人々に親しまれている、明治から昭和初期にかけてつくられた一連の洋風住宅を指す。一九九五年一月一七日阪神・淡路大震災で、この地区の大切な建築群は大きな被害を受けたが、異人館の多くもこの悲劇からまぬがれなかった。しかし、震災から早くも一ケ月後に動き出した市教育委員会とその意向を受けて、地元、各地方の建築家グループたちがそれぞれ独自の手法を模索しながら、被害の現状調査から修復工事までを、そこに住む人々とともにやり遂げた、その報告である。同時に、異人館を再生するための歴史との対応が、思いもよらない発見や工夫を導き出した、愛すべき街・神戸の復興物語でもある。