とてつもない妖と対峙した泰麒は、身動もせず、その双眸を睨み続けた。長い時間が過ぎ、やがて発した言葉は「使令に下れ」。異界へ連れてこられても、転変もできず、使令も持たなかった泰麒は、このとき、まさに己れが「麒麟」であることを悟った。しかし、この方こそ私がお仕えする「ただひとり」の王と信じる驍宗を前に、泰麒には未だ、天啓はないまま。ついに、幼い神獣が王を選ぶ-。故郷を動かす決断の瞬間が来た。