文豪露伴は、かつて身寄りの初心者を相手に俳句指導の会を開いたことがあった。露伴の甥にして後に東大教授・作家として知られた著者が、自らその筵に列なったときのノオトをもとに露伴の肉声を再現する。的確無比の評言、舌を捲く博引旁証、ときに微醺をおび悠揚と説く俳句作りの勘所は、読む者を魅了する。一読、句作の腕・鑑賞の力が一ランク・アップ疑いなしの、豊饒にして稀有の記録である。