夫が出稼ぎに出て、二人の子供と北国の浜の家で留守を守る浜浦登世、三十五歳。水産加工場にパートで働きながら、つつましく暮らす彼女を、身体の奥底からのなにものかが突き動かす…。幼なじみで小学校の教師をしている英子、その夫の聖次、水産加工場事務長の小向佐太郎、そして二人の子供たち。登世の周りの人間たちを包み込みながら、彼女は次第にその運命を狂わせて行く…。一人の女の運命を描ききり人間存在の哀しさを刻み上げた、三浦文学の新たな結実。