ファシズムとナチズムの交錯する第二次大戦下のイタリア。戦場から離れた都市の片隅で、戦火とは異なるもう一つの暴力が多くの無辜の命を奪おうとしていた。どのような運命がイタリアのユダヤ人たちに襲いかかり、何が彼らの命運を分けたのか…。著者はローマ、ヴェネツィア、トリエステ、フェッラーラをめぐり、その沈黙する街路に立って、苦難に生き、闘い、斃れた彼らの声に耳を澄ます。イタリア社会の深部を、ひそやかに、しかし滔々と流れ続けてきたユダヤ人とその文化の水脈をたどる旅。