江戸から東京にかけての食の歴史をたどってみると、三つの大きな画期が浮かびあがってくる。第一はすし、てんぷら、蒲焼、佃煮をはじめとする江戸前の料理がいっせいに出揃った幕末期、第二は文明開化にはじまる西洋料理の受容期、第三はそれらが日本的洋食として広く一般家庭に普及した大正末、とくに関東大震災後である。本書は、このような江戸から東京にかけての食の形成史である。料理だけでなく、その素材の生産や流通まで含めて書いてみた。