ある春の宵、セーヌの橋の下で、紳士が飲んだくれの宿なしに二百フランを恵む-。ヨーロッパ辺境に生まれ、パリに客死した放浪のユダヤ人作家ロート(一八九四‐一九三九)が遺した、とっておきの大人の寓話。他、ナチス台頭前夜をリアルに描く「蜘蛛の巣」など四篇を収録。