道子の母は尾鷲の方から大島に女郎として売られて来た。父と知りあい、道子を産んで間もなく男と出奔した。十九歳の道子は、母が女郎でも、淫売でもかまわなかった。自分の乳房、腹、脚のどこに母の血が流れているのか、腕を思い切り噛んで、すすり泣いた。…大島、古座、新宮を舞台に道子が辿る愛欲の軌跡。