還暦間近の俺は、若い頃、絶対に相容れないと思っていた父親のため、仕事帰りにとんかつを買い、「さっぱりしたなあ」の言葉を聞きたくて体をふく。介護をする毎日、止めようもなく過ぎてゆく時間とその中でふいに訪れる僥倖のような瞬間が静かに響くエッセイ。