私だけが母の死を信じていた。脳腫瘍を患う母を前に、医師として生き続けられる確信を持つことは無理だった。だが冷徹な眼差しは、まもなく死ぬ母への愛を不確かなものにする。母の危篤にうろたえる親族から孤立していく青年医師の心理を描いた表題作、他4編を収録。