明治7年、時は文明開化真っ盛り。往来には義経袴に革靴の女の後を、大礼服に山高帽の男が続く。まさに、百鬼夜行ならぬ百鬼昼行の世…。元八丁堀与力・原胤昭は、恩師有明捨兵衛が悲痛の死を遂げたことから長年勤めた石川大牢獄島を飛び出した。そして、有明の残した姉妹が営む絵草紙屋に身を寄せる。この清麗可憐な姉妹に導かれ、粋な町奴は十手を片手に出獄人保護という徳行に乗り出した。だが、官服纒う物怪や凶悪無残な悪党どもが行く手を阻む。鳴呼、正義は地に堕ちたのか?不思議な縁によって数奇な運命を全うした明治の傑人を描く、大伝奇小説。