浦本洋次は港町で暮らす網元の次男坊。中学生の彼は、海に生きる男たちの背中を見つめ、大人になるということの意味を考えていた。洋次は、多感な想いを喧嘩、陸上競技、冬の船上にぶつける。だが、それでも洋次の痛みと苛立ちは消えない。少年に重くのしかかる家族の秘密。船子たちが垣間見せる悩み。老いた漁師のやり場のない哀しみ。そして、同級生への密かな恋と性へのあこがれ。すべてが、洋次の試練となり、心を激しく突き動かしていく-。少年の心象風景と成長を鮮烈に描いた北方文学の名品。