日本近代文学固有の産物、私小説とは何か。作家たちは芸術の理想と実生活の現実とのギャップにどう対処したのか。この二律背反の観点から、自然主義を淵源とする私小説・心境小説を分析し、鴎外・花袋・藤村・秋声・荷風・志賀・漱石らの私生活と作品の相関を追究した本書は、文学研究の流れを方向づけた、戦後の私小説論の一大到達点である。