時は1886年。ロンドン随一の調律師エドガーに陸軍から奇妙な依頼が届く。「ビルマの奥地に行ってエラールの調律をしてほしい」エラール。それは音楽を愛する者にとって憧れともいえる伝説のピアノ。遙か遠い戦禍のビルマになぜ-疑問と不安を覚えながらも、彼は旅立つ。愛する妻を一人ロンドンに残して。カルカッタ、ラングーン、マンダレー…未知なる土地での出会いは、エドガーを引き戻せない運命の轍へと巻き込んでゆく。すべてはバッハの旋律のように静謐で、儚く、美しく、時に不条理なもの。すべては説明のつかない大きな愛。世界各国から絶賛された、弱冠26歳の医大生による衝撃の処女作。