春野先生は、三週間だけ、ぼくら三年一組の担任だった。
その三週間は、ぼくにとって、ミラクル(奇跡)だったんだ。
*
ぼくらは、一人一人自己紹介をした。
「ぼくの名前は、中田俊輔です。得意なことは、……ありません」
「じゃあ、俊輔くん、今、がんばってることは何かな」
「それもありませーん」
そういって、ぼくは座った。
(こんなふうにいうと、きっと、この先生も怒るんだ。だって、二年生の時、ぼくは、ずっと怒られていたんだから。……先生なんてきらいだ)
でも、春野先生はちがった。サッカーが得意で、ピアノがちょっと苦手な先生は、ぼくの「得意なもの」を一緒にさがそうといってくれて……。
できないことばっかりで、先生がきらいだったぼくの毎日が、春野先生の登場で変わりはじめる。読むと学校が好きになるお話。