まだ焼け跡の残る敗戦直後の東京の町の片すみで男は恋を知りそめたばかりの盲目の少女と出会い、抱いた少女の裸身の背後に、朽ち果てた無惨な女たちの尸(しかばね)の幻影を見る。恋の道ゆき、地獄廻りのものがたりに、人間の哀しさ、愛しさと残酷さを容赦ない筆致で剔出する『風流尸解記』。芸術選奨受賞。『蛾』『手』『心猿』『姫鬼』『獲麟』『樹懶』の六短篇を併せて優れた現代詩人金子光晴の遺した全小説7篇を集成。