大衆的英雄『鞍馬天狗』を生み出す一方、『パリ燃ゆ』、『天皇の世紀』で歴史の中の人間像を精緻に描いた大仏次郎。折にふれて書かれた随筆は、多面的な文学活動の根っこにある、深い教養と批判精神に裏打ちされた人間大仏次郎の闊々とした人格の魅力を最もよく伝えている。随筆集『屋根の花』収載の四十三編に、歴史紀行『義経の周囲』から十編を付す。