慈覚大師円仁の著わした『入唐求法巡礼行記』は、日本最古の旅日記で、世界三大旅行記の一つともされる。五台山への巡礼、長安資聖寺での生活、廃仏毀釈の法難。九年半にわたる円仁のさすらいと冒険の旅の記録は、唐代動乱の政治や庶民の生活を克明正確に描写する。本書は、この旅行記の魅力と歴史的価値を存分に論じるライシャワー博士畢生の研究の精華である。