ある一家心中事件をめぐって生み出されたいくつかの言説。法の言説と新聞報道。「新四郎さ」そして「山に埋もれたる人生ある事」。事件の季節は入れ替わり、新たな動機が付与される。柳田はその独特の方法をもって何を語ろうとしたのだろうか。事実…。そしてその記録が描きだそうとした歴史の意識とは…。本書は、社会記述の方法をめぐるスリリングな論考である。