17歳の女子高生・美紗の前にあらわれた不思議な魅力の転校生・榊冬馬。満月の夜、屋上庭園で意識を失ったところを冬馬に助けられた美紗は、二十歳で死ぬ病気に罹っていることを冬馬に告白する。次第に体が弱り病室のベッドに伏せる美紗を訪ねた彼は美紗の病気を治すという――二人触れ合って、ともに生を願うという方法で。美紗と冬馬の愛は至上の高みに昇りつめる。ところが実は冬馬は吸涙鬼種族の一人だった。(講談社文庫)
あまりにも美しく希有な、愛の奇蹟の物語。
市川拓司、純愛ファンタジーの傑作!
若い二人は死の諦念に対峙する。二人の昇華した愛は死ををのりこえられるか?
ゼロ年代を席捲した恋愛小説ブームの中心に位置する「いま、会いにゆきます」「恋愛寫眞 もうひとつの物語」「そのときは彼をよろしく」そして・・・・日本が感動の涙にふたたび溢れる!
あらすじ)
満月の夜、屋上庭園で意識を失ったところを冬馬に助けられた美紗は、翌日彼のコテージを訪ね、二十歳で死ぬ病気に罹っていることを冬馬に告白する。次第に体が弱り病室のベッドに伏せる美紗のもとを訪ねる冬馬。彼は美紗の病気を治すという――二人触れ合って、ともに生を願うという方法で。冬馬は悲しみの涙を吸い、生きるために願う。
夜を徹して続く妖しく甘美な治療。美紗と冬馬の愛は至上の高みに昇りつめる。
実は異能をもつ冬馬は、涙をすって生きる吸涙鬼の一族だった・・・。
著者メッセージ)
「この世界。この国に対する強烈な違和感。自分はなぜこうまでひとと違うのか? その虚構的解釈としての物語。
なぜひとびとはこうも他者を否定することにやっきになっているのか。現実でも創作物の世界でも。否定すること。憎むこと。妬むこと。豊かさではなく乏しさを描いた世界。現実に目を向けるんだといいながら、彼らは負の心をむさぼります。
『吸涙鬼』は、彼らではなく我々の物語です。愛とは生きて欲しいと強く願うこと。肯定し、受容し、赦し、そして生かす、育む。情熱と官能。熱を帯びた感傷。死と再生。吸涙鬼という存在に与えた体質の多くは、現実にぼく自身が背負っている業のようなものです。そして彼が愛する少女の個性はぼくの妻から。水と火の邂逅。陰と陽。生まれる遥か前から惹かれ合うことが約束されていたふたり。
この小説は、ぼくの仲間への呼びかけ、我々はここにいるぞという、ささやかなる烽火でもあります。もしかしたら、あなた自身が吸涙鬼なのかもしれないのです。」