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  • 著者後藤明
  • 出版社講談社
  • ISBN9784062884570
  • 発行2017年12月

世界神話学入門

なぜ世界中によく似た神話が見られるのか。神話には人類の古い歴史が埋めこまれている。最新の神話研究とDNA研究のコラボにより、「出アフリカ」以降のホモ・サピエンス移動の軌跡が明らかに。世界の神話の分析から浮かび上がる人類の壮大なドラマ。人類史の見方が変わる!
 日本神話では男神イザナギが、亡き女神イザナミを求めて冥界に下ります。一方ギリシア神話にも、オルフェウスが死んだ妻エウリュディケーを求めて冥界に下るという非常によく似たエピソードがあります。しかしこのパターンの神話は上記の二つに止まるものではなく、広く世界中に分布しています。では、なぜこのように、よく似た神話が世界中にあるのでしょうか?
 2013年にハーヴァード大学のマイケル・ヴィツェルが、この謎を解くべく『世界神話の起源』という本を出版しました。この本によれば、世界の神話は古いタイプの「ゴンドワナ型」と新しいタイプの「ローラシア型」の二つのグループに大きく分かれるとされます。「ゴンドワナ型」はホモ・サピエンスがアフリカで最初に誕生したときに持っていた神話です。それが人類の「出アフリカ」にともなう初期の移動により、南インドからパプアニューギニア、オーストラリアに広がり、アフリカやオーストラリアのアボリジニの神話などになりました。
 一方「ローラシア型」は、すでに地球上の大部分の地域にホモ・サピエンスが移住した後に、西アジアの文明圏を中心として新たに生み出されたと考えられています。それがインド=ヨーロッパ語族やスキタイ系の騎馬民族の移動によってユーラシア大陸全域に、さらにはシベリアから新大陸への移動によって南北アメリカ大陸に、そしてオーストロネシア語族の移動によって太平洋域へと、広く広がっていきました。つまりこの説によれば、日本神話もギリシア神話もローラシア型に属する同じタイプの神話ということになります。両者が似ているのは、むしろ当然のことなのです。
 近年、DNA分析や様々な考古学資料の解析によって、人類移動のシナリオが詳しく再現できるようになりました。するとその成果が上記の世界神話説にぴったりと合致することがわかってきました。すなわち神話を分析することで、人類のたどった足跡が再現できるようになったのです。
 本書は、近年まれに見る壮大かつエキサイティングな仮説であるこの世界神話学説をベースにして、著者独自の解釈も交えながら、ホモ・サピエンスがたどってきた長い歴史をたどるものです。

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