東京の町並は、関東大震災や大空襲を経て高度成長期に至り、かつての面影を殆ど留めないまでに変貌してしまった。今は失われた東京には、都電が縦横に走り、堀や川、それに架かる橋をめぐって人々が往来した。未舗装の道路、狭い路地、煙突、広告塔。消えたものは枚挙にいとまがない。本書は、黄金時代の日本映画に記録されていた東京の風景を集め、昭和二、三十年代の細部を再現しようとした、懐かしの東京時間旅行の試みである。